JOYN DEVELOPMENT STORY

JOYN 開発秘話

サイバーストークは2003年に代表・中田知紀の個人事業としてスタートしました。
2005年に株式会社サイバーストークとして法人化。メーターパネルのカスタマイズ事業とLED事業を2本柱に発展を遂げてきました。

カーオーディオ事業に参入したのは2013年9月のことです。
2010年よりトヨタ自動車とメーター事業で協業しており、2013年の東京モーターショーでもコンセプトモデルの展示が行われていました。

視察のため、中田がトヨタ自動車ブースに向かって歩いていたところ、その導線上に展示されていたあるものに目が留まりました。ダイハツ工業ブースに展示されていたそのモデルこそ2代目コペン(LA400K)のコンセプトモデル。このモデルと出会ったことが様々な方々との出会いを生み、その後の「JOYN SMART STATION」開発のきっかけになっていったのです。

おふたりの出会いと新たな挑戦のはじまり

2台のコペンは鮮やかな青と緑にペイントされて華々しくデビュー。ダイハツ工業がこのモデルに掛ける意気込みと期待が伝わってくるものでした。
中田がそのインテリアを覗いてみたところ、一般的な1DIN/2DINのオーディオが備わっていませんでした。「未来的なモデルだな。スマホベースで音楽を流すのだろうか!?」。そう直感的に感じた中田に声を掛けてきた人物がいました。ダイハツ工業のチーフデザイナー・和田広文氏です。自己紹介した中田に対し、和田氏はその場でチーフエンジニア・藤下修氏を紹介。それ以降、中田は和田氏や藤下氏と情報交換を続けることになります。

東京モーターショーでは「KOPEN」という名で出品された「COPEN」の発売がスタートしたのは2014年6月19日のことでした。
当初の市販モデルは2DINのオーディオクラスターがない状態が標準。しかし、オプションの「純正ナビ・オーディオ装着用アップグレードパック」を装着する人が多くいる販売状況を見た中田は「せっかくのデザインが損なわれてしまう」と感じました。

和田氏、藤下氏との出会いから1年近くが経過した2014年9月11日、藤下氏がサイバーストークを訪れます。
当時はスマホに新しい機能がどんどん搭載され、生活に欠かせない存在としてすっかり定着した頃。しかし、今では当たり前となったAmazon Music、Spotify、Apple Music、Google Play Musicといったストリーミングサービスはまだ日本に未上陸(2015年にLINE MUSICとAWAがスタート)。また、ナビアプリに関しても、存在はしていたけれど、精度が低く、操作性も悪い時代でした。

「通信圧縮技術は急速に進化を遂げている。スマホとクルマとの連動はさらに進むだろう。スマホとクルマを結びつけられるパーツを作りたい」と考えていた中田は藤下氏に「JOYN SMART STATION」の原型となるアイデアを提案します。

市販車にはオーディオレスのクルマでもスピーカーは最初から装着されています。「Bluetoothなどを利用し、スマホに取り込んだ音楽データを送信できる機能が付いたアンプがあればオーディオは再生できますよね」。中田は藤下氏にそう提案。共同開発のポイントが垣間見えた瞬間でした。余談になりますが、これが実現したのは中田の誕生日の翌日のことでした。

藤下氏と打ち合わせをした約2週間後の2014年9月26日。サイバーストークにコペンの研究車両が陸送されてきました。しかし、その時点のサイバーストークにはオーディオ分野の経験がゼロ。立派なコンセプトを提案したは良いけれど、開発に進むためのノウハウは皆無だったのです。そこからサイバーストークのさらなる苦難がはじまります。

試練から「Olasonic」との出会いへ

オーディオの知識を得ようと試行錯誤する中で知ったブランドのひとつに「Olasonic」(オラソニック)があります。ソニーのオーディオ技術部門を退社した方々が集い、立ち上げたそのオラソニックは当時設立されて5年ほどの若いブランドでした。

パソコンは3ボルトから5ボルトの低い電圧しか供給できないため、PCスピーカーからは良い音が出ない。特に低音は出ない。それがその当時の定説でした。
しかし、オラソニックのPCスピーカーはコンパクトであるにも関わらず良い音が出る。そのことが評判になり、オラソニックのPCスピーカーは日本のブランドとしては初めてAppleストアに並んだスピーカーとなりました。また、小型・薄型だけれど性能が良いアンプにも定評がありました。オラソニックは高音質と小さいことにこだわるブランドだったのです。

オラソニックの製品開発に対する考え方は私たちが考えたコンセプトにまさに合致するものでした。
マイクロLEDなど、「小さいけれど高品質」ということにこだわってきたサイバーストーク。「コンパクトだけれどデザインが良く、所有する楽しみがある」ことにこだわったダイハツ工業・コペン開発陣。オラソニックはその両者が考えたコンセプトを実現するのに絶好のブランド、そして不可欠な存在だったのです。中田がオラソニックに熱い思いを伝えた結果、技術協力を得られることが実現しました。

藤下氏によると、いろいろなカーオーディオメーカーに相談したけれど、DIN規格以外のものを作ってくれなかったのだそうです。スマホと連動させてオーディオを鳴らす音響機器の開発にどのメーカーも「YES」と言ってくれなかった。それでも、ダイハツ工業の開発陣はコペンの考え抜かれたインテリアデザインを崩さず、高音質な音楽再生を実現すること、また、ナビアプリを安定的に表示させることをあきらめていなかったはずです。その熱い思いに応えようと試行錯誤した結果がサイバーストークとオラソニックを結び付ける奇蹟の力として働いたのだと思います。

感動の体験を通じ、新事業を3本目の柱に

サイバーストークとダイハツ工業・コペン開発陣にオラソニックを加えた3社が照準を定めたのは2015年1月10日に開幕する東京オートサロンでした。世界が注目する華やかなそのショーのダイハツ工業ブースで全く新しい画期的な製品を世界初披露することにしました。

開発が本格的にスタートした時点で残るは2カ月弱。クリアな音質、低音の再現性、原音を忠実に再生するフラット特性といったオラソニック本来の美点はそのままに、プッシュ式の立ち上がりパネル方式、ビルトイン式回転タイプなど、コペンのインテリアイメージをできる限り損ねないデザインのものを完成させるべく、試作を繰り返しました。

2014年12月17日。オラソニックのアンプ基盤とサイバーストークが開発したJOYN基盤を組み合わせた「ニコイチ」の試作機が完成しました。製品化までは間に合わず、その「ニコイチ」試作機をコンセプトモデルとして「東京オートサロン2015」で展示したところ、多くの反響をいただき、量産化に向けた良いスタートを切ることができました。

その「ニコイチ」試作機で初めて音楽を再生した時の感動は忘れることができません。
「涙が出そうになった」というのはよく聞く言葉ですが、本当にその通りだったのです。身体が感じたというより、魂が共鳴しているような不思議な感動でした。まさか自身がそれを経験するとはそれまで考えることさえありませんでした。

そのエピソードをソニーとオラソニック、オーディオ開発一筋に50年を歩まれた川崎博愛氏にお話ししたところ、「可聴領域を超えた音、音響の世界と人の感覚との関係についてはまだまだ科学的に解析できていない部分も多いと聞いたことがあります。理由はよくわかっていないけれど、人の魂に訴えかけてくる領域というものがあるようなのです。回路設計の醍醐味はそのようなところにもあると思います」という言葉をいただきました。

「感動する音に出会えた人は幸せ。その感動を人に伝えることができる人はもっと幸せ」。
川崎氏のその言葉が支えとなり、私たちサイバーストークはカーオーディオ事業に注力していくことを決めました。

2016年4月にBluetooth搭載アンプ「JOYN SMART STATION」の販売を開始。また、ダイハツ工業と正式ライセンス契約を終結し、同年6月に「JOYN for COPEN」がダイハツ工業「DRESS-FORMATION」の内装パーツ第一弾として全国のダイハツ販売店よりリリースされました。

スマホファーストの思想がさらに進化

原音再生機能に優れ、アンプ性能が高く、スピーカードライブ能力も高いということは、つまりパワーアンプとしても利用できるということ。カーオーディオプロショップ「サウンドプロ」にご紹介いただいた音響機器・映像機器メーカーの「audio-technica」(オーディオテクニカ)のご協力により、車種専用設計のハーネスおよび汎用ハーネスである「サウンドアップキット」が完成。「JOYN SMART STATION」は高性能アンプとしても利用可能になりました。
ハイローコンバーターを利用することで、車に搭載されている純正ナビからスピーカーへ送られる信号を「JOYN SMART STATION」に接続。純正ナビでも純正カーオーディオとは一線を画す高音質なサウンドを実現できるようになったのです。

ダイハツ工業・コペン開発陣とオラソニックのご協力により誕生し、オーディオテクニカのご協力により、本格Hi-Fiアンプとしてさらなる進化を遂げた「JOYN SMART STATION」はさらにスマホとの連動性、親和性を探る作業を繰り返しながら現在も進化中です。シンプルな回路設計という本来の思想はそのままに、各種ストリーミングサービスやナビアプリ、通話アプリといったスマホアプリに対応するのはもちろん、DIN規格のナビゲーションに変わり、2019年に登場したディスプレイオーディオにも適合し、現在も製品をブラッシュアップ中です。

2020年4月吉日